超音波の発生原理から探傷への応用方法を御説明致します。
音波は、圧電素子と呼ばれる電圧を掛けると振動する素材を使って発生させます。
図のように薄くカットした圧電素子の両側に電極を貼り付けて、インパルスの電圧を与えると素子が伸縮・膨張して振動します。
素子の厚みが薄くなると高い周波数の振動が発生し、人間の耳に聞こえる範囲では音波、可聴音の限界とされる20KHz以上の音を超音波と言います。
圧電素子には水晶などがあり、時計や電子ライターなどにも使われています。
超音波を探傷に利用するには、この発生部(振動子)を超音波センサー(探触子と呼ぶ)にする必要があります。
探触子は、振動子に吸音材と保護板を貼り付けてケースに挿入して作ります。すると、超音波は探触子の保護板側にのみ発生すると同時に、音波の余震が少なくなり、超音波センサーとして使用できる状態になります。
超音波は、山彦と同じで物質の境界面で反射する性質があります。
探触子から送信された超音波は、物質の表面で反射し、反射した音波は振動子に当って発生したときと同じ原理で電圧に変換され、受信器に信号となって取り込まれます。
超音波の伝播性の善し悪しは、音響インピーダンスと呼ばれる物質の特性によります。
音響インピーダンスは、抵抗と逆で大きいほど超音波の伝播性が良くなります。
音響インピーダンス(Z)は、次式で簡単に求められます。
Z = C ・ ρ C = 物質の音速
ρ = 密度
また、超音波には波の伝わり方により、縦波や横波、表面波などに分かれて伝播性能が変わります。地震の縦揺れや横揺れと同じで、振動形態や伝播速度が変わります。
代表的な音響インピーダンス
物質 | 音響インピーダンス | 密度 | 縦波音速 m/s | 横波音速 m/s |
鋼 | 46.02 | 7.8 | 5900 | 3230 |
アルミニウム | 16.9 | 2.69 | 6260 | 3080 |
水(20℃) | 1.48 | 1.0 | 1480 | 存在しない |
空気 | 0.0004 | 0.0013 | 340 | 存在しない |
超音波は、物質1と物質2の境界面で一部が反射し、残りは通過します。
超音波の反射率(r)は次式で求められます。
r = Z1-Z2 / Z1+Z2
通過率(T)は、
T = 1-r となります。
超音波探傷をする時に、水や油を使用するのは、被検査体内部に多くの超音波を通過させるためです。探触子と被検査体の間に空気層があると、ほとんどの超音波は表面で反射して、内部に入射する事ができなくなります。
図は探触子を被検査体に、直接接触させて探傷する例です。
①の位置に探触子を当てると、きずが無いので送信波(T波)の後には、底面からの反射波(B波)が戻ってきます。
②の位置には小さなきずがあり、探触子がここに到達すると、T波とB波の間にきずからの小さな反射波(F波)が発生します。
③には大きなきずがあり、探触子がこの位置に来ると振幅の大きなF波が現れます。この波形はきずの真上で一番大きくなります。F波はきずの大きさに比例して大きくなり、きずが超音波のビームよりも大きくなる振幅は飽和しB波は消失します。
①の位置にあるきずは、被検体の表面付近にあるためF波の位置はT波の近くにあります。F波はきずが深くなるに従って、T波から離れて行きB波に近付きます。
超音波探傷では、超音波の伝播時間に音速を乗じてきずの深さを正確に知る事ができます。一般的に良い材料は、音速が安定しており計測精度も良くなります。
超音波は液体などを通して物質に斜めに当ると、入射角度と同じ角度で反射する成分と屈折して入射される成分に分かれます。
その時の屈折角度は、スネルの法則により求められます。
C1L / sinΘ1 = C2L / sinΘ2
これを斜角探傷と言い、被検体の裏面縦割れ検査などに使用します。
超音波探傷をする場合の欠陥検出性能は、探触子の周波数ときずの形状や傾きに左右されます。
通常、欠陥の検出限界寸法は波長の1/4~1/8程度で、探触子の周波数と波長の関係は、下式で表されます。
C = 被検査体の音速
C = f ・ λ f = 試験周波数(振動子の厚みで決定)
λ = 波長
小さな欠陥を見付けたい時は、試験周波数を上げることで波長を小さくして検査します。
また、超音波は欠陥の形状により、反射率が変化して見付け易さが変ります。反射率が大きい欠陥は検出し易く、欠陥は検出し難くなります。
但し、超音波は面反射しますので、反射率は欠陥の厚みに影響されません。
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